プレスリリース

2017年11月7日

簡易な『水蒸気ガス化1)による炭素複合材中の炭素評価法』をさらに発展させました

エッジ炭素3)の基礎研究、ニードルコークス物性評価から炭素製品の品質管理まで ―

 株式会社 KRI(本社:京都市下京区、社長:田畑 健)は、2017年1月、『複数の異なる炭素から構成される炭素複合材』を簡便に分析・評価する技術を開発しましたが、このたび、さらに、本評価法が、機能発現につながる炭素構造の基礎研究のツールとして、さらには、リチウムイオン電池負極材用炭素2)や、他の炭素複合材の物性推算の手法としても使えることを見出しました。

【概要】

  • @ 研究開発領域(炭素構造・機能発現の基礎研究ツール)
    開発した動的な炭素評価技術に、SEM,TEM4)による微細構造解析技術を組み合わせることにより、化学反応過程における炭素の構造変化を直接的かつ視覚的に捉えることができます。リチウムイオン電池負極材として使用する炭素(エッジ炭素)の配向等の微細構造制御により、新規材料開発を実施できる技術を確立しました。
  • A 製品特性評価領域(炭素材物性推算ツール等)
    本炭素評価技術が、リチウムイオン電池負極材炭素以外の炭素製品についても適応できることを確認しました。例えば、電炉を利用した鉄スクラップのリサイクルにおいて、電炉用黒鉛電極の原料として用いられるニードルコークスにとって重要な物性である熱膨張係数(CTE)5)を簡易に推測できる可能性を見出しました。
  • B 品質管理領域(現場での品質管理手法構築サポート)
    本評価法は、測定装置内に水蒸気を導入して、熱を加えながら重量変化を測定するという単純な方法ですが、装置内で水蒸気が結露するといった問題がありました。そこでKRIは、計測装置会社の(株)リガクと共同で既存測定装置を改良し、(株)リガクは測定が可能な新装置、“HUM-TG”を完成させました。KRIは測定ノウハウをベースとした品質管理手法を確立しており、炭素材料メーカー様等の品質管理レベルの向上に寄与いたします。

【背景】

 炭素複合材は、2種以上の異なる炭素から構成される機能性複合材で、その優れた特長から幅広い分野に展開されています。ただし、これらの異炭素を分離して定量化する方法はありませんでした。KRIは今年1月に確立した『水蒸気ガス化による炭素複合材中の炭素評価法』をさらに発展させ、様々な用途(基礎研究、製品特性評価、品質管理サポート)で活用できないかを検討して参りました。
@の基礎研究面では、リチウムイオン電池負極材として使用する炭素(特に、エッジ炭素)の構造制御が電池の安定化、信頼性向上のために必要不可欠とされておりますが、この技術を駆使することにより、負極材用の良質炭素原料選定に加えて炭素構造制御を応用した高機能性炭素材の製造プロセス構築の可能性が広がり、より性能の良い、安定化したリチウムイオン電池の開発が期待できます。
(リチウムイオン電池負極材市場:約1300億円)
Aの評価面では、電炉用黒鉛電極原料のニードルコークスは、これまで複雑な工程により評価していましたが、CTEを簡便に推定できることで、製品の品質向上、製造プロセスの効率化を図ることができます。
(ニードルコークス市場規模:約2000億円)

【本技術の特徴】

 炭素と水蒸気との反応(ガス化)開始温度が炭素により差があることを利用し、異炭素を個別に定量化します。さらに、反応過程の任意な状態において反応を停止し、そのサンプルの炭素形態観察を実施することにより、化学反応過程における炭素構造変化を直接、視覚的に捉えることができます。

【応用分野】

 リチウムイオン二次電池用炭素複合材、航空機・自動車用あるいはスポーツ用品用炭素複合材等、異なる炭素材料を混合し、焼成してつくられる炭素複合材において、正確な炭素構成と性能との関係把握が可能で、製造プロセス開発、製造ラインでの工程・品質管理に役立てることができます。
今後、様々な領域で本評価手法を用いた受託研究ビジネスの拡大と品質管理サポートビジネスを推し進め、世界の炭素ビジネスの発展のために貢献してまいります。

本件に関するお問い合せは下記までお願いいたします。
【プレスリリースに関するお問合せ先】
TEL:075−315−9242
(株)KRI 経営企画部 藤原
【技術に関するお問合せ先】
TEL:06−6466−2912
(株)KRI 取締役 常務執行役員  
(株)KRI 環境化学プロセス研究部   池内、矢野
(株)KRI 解析研究センター  

<用語の解説>

1) 水蒸気ガス化
石炭から合成ガス(一酸化炭素ガス、水素ガス)を製造する技術で、次の反応式で表されます。
C(炭素) + H2O(水蒸気) → CO(一酸化炭素)+H2(水素)
合成ガスは、メタン、メタノール、アンモニア等をつくるために使われます。
2) リチウムイオン二次電池と負極用炭素
家庭用にすでに普及している充電可能なリチウムイオン二次電池(電気自動車にも展開されています)は、その内部でリチウムイオンの移動により充電、放電しています。充電時にリチウムイオンを蓄える役目を果たすのが負極であり、一般に炭素複合材が使われています。
3) エッジ炭素
黒鉛結晶の端面(エッジ面)に位置する炭素原子のことであり、他の部位の炭素原子よりも反応性が高いなどの特徴を有しています。リチウムイオン電池の場合、活性なエッジ炭素原子が電解液と接触することにより、電解液の分解などの反応を引き起こすことが知られています。
4) SEM,TEM
走査電子顕微鏡(SEM)は電子線を試料に当てた際に試料表面に放出される電子の情報を基に、試料表面の凹凸や組成の違いによるコントラストを得る顕微鏡です。透過電子顕微鏡(TEM)は試料を透過した電子線を用いて試料の内部構造を観察する顕微鏡であり、試料内の原子配列を直接観察することも可能です。
5) 熱膨張係数(CTE)
物体の長さ・体積が温度の上昇にともなって増加する割合を示します。

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