プレスリリース

2017年2月7日

水蒸気ガス化による炭素複合材中の炭素評価法

−リチウム二次電池に使われる炭素複合材(負極用炭素)の評価が可能に−

 株式会社 KRI(本社:京都市下京区、社長:住友 宏)は、電気自動車(EV)のバッテリーとして使われているリチウム二次電池の重要構成材料である、『複数の異なる炭素から構成される負極用炭素複合材』を簡便に分析・評価する技術を開発しました。
 従来、炭素複合材中の異なる炭素それぞれの定量分析は困難であるとされてきましたが、KRIが開発した方法により可能となり、リチウム二次電池の製品品質向上に大きく貢献すると期待できます。
 また、本評価法は、今後ますます材料転換が進むと予想されている航空機や自動車等に使われる炭素複合材の評価にも適用できます。

【背 景】
 炭素複合材は、2種以上の異なる炭素から構成される機能性複合材3)で、その優れた特長から幅広い分野に展開されています。
 例えば、リチウム二次電池に使われる負極材も炭素複合材の一種で、天然黒鉛4)の粒子表面に石炭系ピッチや高分子樹脂等の熱可塑性材料5)をコーティング後、不活性ガス雰囲気中で900℃以上の温度で焼成して炭化被膜を形成したものです。
 この炭化被膜は、リチウム二次電池の特性(電圧や耐久性)を決定する重要な因子のひとつとされているものの、炭化後の被膜量を測定する手法はありませんでした。

【評価方法】
 KRIでは、炭素と水蒸気との反応(ガス化)開始温度が炭素により差があることを利用し、以下の評価方法を検証しました。

◇水蒸気雰囲気下、炭素複合材試料を加熱(室温から1300℃)しながら、試料の重量変化を計測します。
 水蒸気等のガス化剤の存在下でゆっくり昇温し、炭素複合材料を構成する第1の炭素を完全にガスに転換後、第2の炭素が水蒸気との反応が起こる温度まで温度を上げガスに転換する、という操作を行います。
 第1の炭素がなくなった時点での重量減少量、第2の炭素がなくなった時点での重量減少量を順次測定することにより、それぞれの炭素がどの程度存在したのかを定量的に評価することができます。

 本評価手法を、リチウム二次電池に使われる負極材に適用すると、まず炭化したコーティング被膜が水蒸気との反応によりガスに転換し、次に温度を上げると天然黒鉛が水蒸気との反応によりガスに転換することがわかりました。 これにより、正確なコーティング量を把握することが可能となりました。

【応用分野】
 リチウム二次電池用炭素複合材、航空機・自動車用あるいはスポーツ用品用炭素複合材等、異なる炭素材料を混合し、焼成してつくられる炭素複合材において、正確な炭素構成と性能との関係把握が可能で、製造プロセス開発、製造ラインでの工程・品質管理に役立てることができます。

本件に関するお問い合せは下記までお願いいたします。
【プレスリリースに関するお問合せ先】
TEL:075−315−9242
(株)KRI 経営企画部 藤原
【技術に関するお問合せ先】
TEL:06-6466-2912
(株)KRI 環境化学プロセス研究部 常務取締役
    研究員 池内、矢野

<用語の解説>

1) 水蒸気ガス化
石炭から合成ガス(一酸化炭素ガス、水素ガス)を製造する技術で、次の反応式で表されます。
C(炭素) + H2O(水蒸気) → CO(一酸化炭素)+H2(水素)
合成ガスは、メタン、メタノール、アンモニア等をつくるために使われます。
2) リチウム二次電池と負極用炭素
家庭用にすでに普及している充電可能なリチウム電池(EV自動車にも展開されてます)は、その内部でリチウムの移動により電気を充電、放電しています。充電時にリチウムを蓄える役目を果たすのが負極であり、一般に炭素複合材が使われています。
3) 機能性複合材
特別な機能を持たせるために設計された2種類以上の材料からなる複合材です。 リチウム二次電池用負極材は、リチウムを格納する機能をもった天然黒鉛粒子と黒鉛粒子へのリチウムの出入りを制御する(黒鉛粒子に被膜した)熱可塑性材料からなります。
4) 天然黒鉛
一般に、2400℃以上の温度で処理された炭素を黒鉛と呼びます。石炭(無煙炭)がさらに地中で熱と圧力を受けたものが天然黒鉛です。
5) 熱可塑性
室温では固体である物質に 熱をかけると水飴状に溶け、温度を下げるとまた固体にもどる特性のことです。
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