プレスリリース

2012年10月23日

リチウムイオン二次電池の高エネルギー密度化、ハイパワー化に対応する安全性の高いセパレータ材料技術を提供

 株式会社KRI(本社:京都市下京区、社長:成宮 明)は、リチウムイオン二次電池の高エネルギー密度化、ハイパワー化に対応する安全性の高いポリシルセスキオキサン(PSQ)系セパレータ材料を開発した。
 本研究は、リチウムイオン二次電池の過充電や短絡による内部温度の高温化を原因とするセパレータメルトダウン、破損による熱暴走抑制に対応可能な新規なセパレータ技術の可能性を提示するものである。本技術は、今後拡大する電気自動車や設置型バックアップ電源など高エネルギー密度リチウムイオン二次電池に求められる安全性の向上に寄与するものと期待される。
 近年、携帯電話、ノート型パーソナルコンピューター、PDA(個人向け携帯情報端末)などの携帯端末機器の需要のみでなく、ハイブリッド車や電気自動車をターゲットにした需要が急激に拡大している。また、大型バックアップ用電源としての可能性も検討されている。電源として用いられるリチウムイオン二次電池の更なる大型化の要求に伴って、年々高エネルギー密度化が進んでいる。また、それらと共にリチウムイオン二次電池の安全性、信頼性を確保する必要が高まっている。
 現在、電池の安全性を確保するための手段として、高温時にセパレータ構成材料が溶けることによってリチウムイオンの通り道である細孔を塞ぐ機能(シャットダウン機能)を有するポリエチレン(PE)系のセパレータを使用している。しかし、過充電や短絡といった内部温度が非常に高温になるような異常時においては、PE系セパレータに大きな穴を開けるメルトダウンを引き起こし、正極と負極の短絡がより誘発されやすくなる。このような点において電池の安全性が十分であるとはいえない。
 本研究では、リチウムイオン二次電池のセパレータとして安全性向上に着目し、耐熱性や耐食性、機械特性に対してPE系材料より優れた特性を有するポリシルセスキオキサン(PSQ)系材料(図1)を用いることにより、高耐性リチウムイオン電池用セパレータとしての可能性を見出した。
 PSQは、RSiO1.5を基本ユニットとし、無機シリカに類似した三次元架橋構造を持ち、一般的な高分子材料と比べ耐熱性、化学的安定性、機械特性に優れている。 また、側鎖Rへ導入する構造の選択により、有機ポリマーと同等の成形性・加工性を付与することができる。

図1. Polysilsesquioxane (PSQ)

図1. Polysilsesquioxane (PSQ)


 従来型PE系セパレータは約160℃の耐熱性しか持たず、シャットダウン後の温度上昇に耐えられない。200℃以上での耐熱性と高温下でのセパレータの形状安定性、耐酸化性が必要であり、これらの解決により短絡による暴走・発火のリスク低減が期待できる。本研究のPSQ系セパレータは、200℃以上の高い耐熱性を有し、セパレータのメルトダウンを回避できる。また、電解液への耐食性も良好であり、長期にわたって安定に使用可能と考えている。

図2. 電界紡糸法の概念図

図2. 電界紡糸法の概念図


 一方、電界紡糸法(ES法)(図2)は、有機ポリマーや無機成分から構成されるナノファイバー形成法として知られており、リチウムイオン二次電池用セパレータに適用可能な不織布膜を容易に形成可能である。本研究では、ES法によりPSQ不織布膜を形成し、簡便な方法でミクロンレベルの繊維から構成されるセパレータを成形することに成功した。(図3) ES法の適用により、将来的にはオンライン成形が可能となり工程の簡略化が期待される。

図3. PSQ系不織布SEM画像

図3. PSQ系不織布SEM画像


 今回の一連の研究において、LiFePO4//EC/PC/LiPF6//Liの標準的な構成であるが、PSQ系セパレータを用いることでリチウムイオン二次電池として動作する事が確認された。(図4)セパレータを構成する不織布繊維径をより小さく、ナノサイズ化することにより、比表面積が大きく、空隙率が高い電解液の保持力に優れたセパレータが形成可能となり、正極・負極間の効率的なリチウムイオン移動度を確保すること期待される。

 今後、大型のリチウムイオン二次電池(LIB)において幅広い応用展開が期待される。

図4. PSQ系セパレータを用いたLIBの充放電特性

図4. PSQ系セパレータを用いたLIBの充放電特性

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      鈴木一子
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